人魚姫と整形手術
ちょっと前にゆれる人魚を見ました。
※※※ネタバレしているのでご注意願います。※※※
人魚姫のストーリーは整形手術に似ている気がする。好きな人に振り向いてもらうために身体にメスを入れる。「俺ぱっちり二重の子が好きなんだよな〜」とか言われて美容外科のHP検索して「こんくらいの値段ならいけんじゃね!?」とか思いながら自分を変えてしまうタイプの女が人魚姫かもしれない。
ゆれる人魚は童話の人魚姫を現代風にアレンジしてエロスとホラー要素を足した作品だと思いますが、R15の本作で一番グロいと思われるのは、姉妹人魚の片割『シルバー』が人間の脚を手に入れるために外科手術をするシーンです。簡単に説明するとあらかじめ切断した人間の下半身を用意し、シルバーの魚部分をチップソーカッターみたいな道具で切断し、代わりに人間の下半身を縫い付けるという小学生が考えたかのような雑……いや、大胆な手術なのですが、手術は成功し、シルバーは声を失う代わりに人間の脚を手に入れました。
しかし手術は成功したと言っても歩行訓練が必要だし、杖をつかなければ歩けない。さらにはウエストを一周するように痛々しい傷が残り、恋人の服をべったり濡らすほど出血もしています。(感染症が起こらないか気になるところです)
しかもこの恋人グロ耐性が無い。どうでもいいですが彼氏くんがグロ耐性無いせいで3回くらい嘔吐&吐き気を催すシーンがあります。
介助が必要になったシルバーを煩わしく思ったのか、シルバーの魅力である声を失ったため夢から覚めたのかは定かではありませんが、恋人はさっさと別の女を作り結婚式を挙げます。しかも人魚姉妹は結婚パーティーに出席しています。招待したのだとしたらどういう神経してんだ。
童話の人魚姫は王子に一方的に片想いした姫が魔女に頼んで人間の脚をもらいました。もちろん王子にも人権がありますので、いかに命の恩人とはいえ人魚姫を妻に迎える義理はありません。王族という公的な立場の人間であれば結婚も自由ではないはずで、いいとこ側室の一人止まりが関の山だったのではないかと夢のないことを考えてしまいます。
つまるところ人魚姫は、
『王子に恋をして勝手に人間になれば王子とワンチャンあるのでは?と勘違いした結果、失恋イコール死というリスク承知で、声と尾びれ……つまりは自分のアイデンティティを失い、取り戻すこともなく自滅した』ように思えますが、ゆれる人魚の最悪なところは「君に夢中だ」と言いながら「でも僕にとって君は魚なんだ」と言った挙句外科手術の申し込みまで彼氏が同席している点です。
恋人が人間になることを望んだから自分の本来の姿も声も捨てて人間になったのに、あっさりポイかよ。と……。
映画のラストでは、恋人を殺せば泡になって消えずに済むけれど、シルバーは恋人を許し腕の中で泡となって消滅します。ハッピーエンドかと聞かれたら間違いなくバッドエンドでしょう。
人魚姫もゆれる人魚も相手の望む(もしくは望んでいると思われる)姿になればきっと自分は愛される。そのためなら犠牲を払ってもいい……なんてのは勘違いだからやめときな。ろくなことにはならんぞという教訓なのでしょうか。